当社ではSI業界の社名としては聞き慣れない花の名前を、その中でも桔梗の名を冠しております。

これは単に奇を衒(てら)ったのではなく、縁があった上でその花の意味を汲んだ上でのものです。

まず当社はその設立を九月一日とし、丁度季節としては秋に花を開せたわけです。

桔梗は萩や撫子・薄などとともに秋の七草の一つに数えられており、実際の開花時期とは微妙にずれますが秋の花と呼んでも差し支えないでしょう。

また桔梗は九月の誕生花の一つでもありますが、もちろんこれだけでは社名の由来としては理由が貧弱です。
当社が重要としたのは桔梗の花言葉である「誠実」という一語です。

企業として最も「誠実」に対応すべき相手は、当然ながらお客様です。

これは企業として当然のことであり、それが巡り巡って社会にも「誠実」な対応となるのです。

しかし昨今の情勢を鑑みるに、企業はお客様には「誠実」ですが社員にはどうでしょう。
現在、特に労働者として若年層にあたる世代ではその顕著に見える異常を「七・五・三」と称しています。

これは中卒、高卒、大卒の新卒してから三年以内の離職率が七割・五割・三割という悲惨な数字を示したものです。
もちろんこれは彼等の就業感や能力、理想追及とのギャップなど理由は離職者の数以上に多岐に渡るでしょう。
しかしこれを離職者にのみ焦点を当ててはいけないはずです。

この約二十年間で日本人の就業に対する信条を縛っていたものはほとんど風化し遺物となりました。

その時代で育った世代がこれまでの常識からは異様なデータを叩きだしているのは何故でしょう。

それは「いかに企業というものが不実な存在であるか」という認識に因るのではないでしょうか。
もちろんたとえメディアによって曲解に曲解を重ねた解釈でも十年言われつづければ一つの常識になります。
そして無闇に肉体以外に個性を求める中途半端な教育で培った中途半端な反骨精神は結果的に現実と欲望を整合させる役目を放棄させました。

当然この状況は企業にとって首肯すべき理由はありません。

従業員の離職は企業にとって当事者の立場に依る多少は異なれども出血に等しく、そのダメージは最悪仕事を通じてお客様にまで及び、企業そのものが失血によるショック死さえ起こり得ます。

では、この昨今の状況を分析した上で企業はどうするべきでしょう。

当社ではこの解決法として賃金体制のあり方を工夫しました。

まずこの業界の通弊として、実際の現場労働者は自分が単価幾らの仕事をしているか殆ど知らされていません。
この悪弊は存在する理由自体が不明であり、同時にこの業界の通弊として存在する長時間労働と相まって、その不可解さは従業員の不満を鬱積させているだけとしか考えられません。

そこで当社は社として管理する従業員個人に関する数字は当事者本人のみには公開すべきであると考えました。

そうすることで厳しい現実か予想外の現実かを知ってもらい、その上で納得してもらうことが従業員に対しても「誠実」に接することであり、それが企業としての命題であるお客様、引いては社会に「誠実」に対応するということではないでしょうか。